古い抵当権が残っている不動産は売れる?何十年も前の抵当権を抹消する方法

古い抵当権が残っている不動産は売れる?何十年も前の抵当権を抹消する方法

古い抵当権が残っている不動産は売れる?何十年も前の抵当権を抹消する方法


相続した実家や土地を売却するために登記事項証明書を取得したところ、何十年も前に設定された抵当権が残っていることがあります。

「昭和40年代の抵当権がまだ残っている」

「借金はとっくに返済したはずなのに登記が消えていない」

「抵当権者が知らない個人名になっている」

「昔の会社が抵当権者だが、その会社が現在も存在するのか分からない」

「親から相続した土地なので、そもそも何の借金だったのか分からない」

このような状態を、実務では「古い抵当権」「休眠抵当権」などと呼ぶことがあります。


では、古い抵当権が残っている不動産は売却できないのでしょうか。

結論からいうと、抵当権が残っていても売買契約を締結すること自体が直ちに禁止されるわけではありません。しかし、一般的な不動産売買では、原則として買主へ引き渡すまでに抵当権を抹消できる状態にする必要があります。


抵当権が残ったまま所有権を取得すると、抵当権が実体上有効である場合、買主が取得した後でも抵当権が実行される可能性があるからです。


特に注意したいのは、

「何十年も前の抵当権だから自動的に消えている」

とは限らないことです。

借入金を完済して被担保債権が消滅していたとしても、法務局の抵当権登記が自動で消えるわけではありません。別途、抵当権抹消登記が必要です。


また、抵当権者が死亡している場合、所在不明の場合、法人が解散している場合などは、それぞれ抹消方法が異なります。


2023年4月1日からは、不動産登記法の改正により、解散した法人名義の古い抵当権について一定の要件を満たせば所有者が単独で抹消申請できる新しい制度も設けられています。


この記事では、

・抵当権とは何か
・なぜ完済後も抵当権が残るのか
・古い抵当権付き不動産を売却できるのか
・抵当権者が現在も存在する場合
・抵当権者が死亡している場合
・抵当権者が所在不明の場合
・抵当権者である法人が解散している場合
・休眠抵当権の供託による抹消
・売却までにどのような順番で整理すればよいか

を、初心者にも分かるように順番に解説します。


株式会社Wakka


株式会社Wakkaは、山梨県南部町に拠点を置き、相続不動産、空き家、中古住宅、土地、古家などの売却相談に対応する不動産会社です。

相続した不動産では、査定を始めてから、古い抵当権、相続登記未了、未登記建物、境界、接道、農地、残置物などが見つかることがあります。


株式会社Wakkaでは、不動産を単に査定して販売するだけではなく、まず売却を妨げている問題を整理し、必要に応じて司法書士、土地家屋調査士、税理士、弁護士などと連携しながら、売却までの手続きを組み立てることを重視しています。


また、株式会社Wakkaは南部町と空き家対策に関する協定を結んでいます。相続後に利用されなくなった住宅を次の所有者へつなげるためには、空き家の管理だけではなく、相続登記、未登記建物、古い抵当権など、不動産流通の前段階にある権利関係を整理することも重要です。


南部町・身延町など峡南地域のほか、静岡県富士宮市・富士市周辺の相続不動産についてもご相談を承っています。

株式会社Wakka
住所:〒409-2217
山梨県南巨摩郡南部町本郷6507

電話番号:0556-64-8064


目次


  1. 古い抵当権とは?なぜ何十年も登記に残るのか

    1. 抵当権とは不動産を担保にする権利

    2. 借金を完済しても抵当権登記は自動で消えない

  2. 古い抵当権が残った不動産は売却できる?

    1. 売買契約は可能でも、原則として引渡しまでに抹消する

    2. 抵当権を残したまま売ることの問題点

  3. まず何を調べる?古い抵当権の確認方法

    1. 登記事項証明書で抵当権の内容を確認する

    2. 完済資料・契約書・抵当権者の現在の状況を調べる

  4. 抵当権者が現在も存在する場合の抹消方法

    1. 完済済みなら抵当権者と共同で抹消登記をする

    2. 書類を紛失している場合もまず抵当権者へ確認する

  5. 抵当権者が死亡・所在不明の場合はどうする?

    1. 抵当権者が死亡している場合は相続関係を調査する

    2. 所在不明なら公示催告・供託などの制度を検討する

  6. 休眠抵当権を供託で抹消する方法

    1. 弁済期から20年以上経過している場合の特例

    2. 「20年経てば自動的に抹消できる」わけではない

  7. 抵当権者が解散法人の場合の新しい抹消制度

    1. 2023年4月から単独抹消制度が新設

    2. 弁済期30年・法人解散30年などの要件を確認する

  8. まとめ|古い抵当権は売却活動の前段階から整理する

    1. 古い抵当権付き不動産を売却する具体的な流れ

    2. 不動産会社・司法書士・弁護士の役割を使い分ける

1. 古い抵当権とは?なぜ何十年も登記に残るのか


1-1. 抵当権とは不動産を担保にする権利


抵当権とは、住宅ローンや事業資金などの借入れをするときに、土地や建物を担保とするため設定される権利です。

例えば、銀行から2,000万円を借りて住宅を購入し、その土地と建物へ銀行の抵当権を設定するケースを考えてみましょう。

借主が契約どおり返済していれば問題ありません。

しかし、返済できなくなり一定の条件を満たした場合、抵当権者は担保となった不動産について競売を申し立て、その売却代金から優先して弁済を受けることができます。


登記事項証明書では、通常、権利部の「乙区」に抵当権が記録されます。

例えば、

抵当権設定
債権額 金300万円
債務者 ○○太郎
抵当権者 ○○銀行

といった形です。

古い登記では、

「債権額100円」

「利息年○分」

など、現在の感覚では非常に小さな金額の抵当権が残っていることもあります。


また、金融機関ではなく個人が抵当権者となっているケースもあります。

例えば、親族や知人から金銭を借り、その担保として土地へ抵当権を設定していたような場合です。

問題は、借入れから何十年も経過し、当事者が死亡したり、法人が解散したり、関係資料が失われたりすると、

「借金は返済したのか」

「現在の抵当権者は誰なのか」

「誰に抹消を依頼すればよいのか」

が分からなくなることです。


1-2. 借金を完済しても抵当権登記は自動で消えない


住宅ローンなどを完済すると、被担保債権、つまり抵当権で担保していた債権は弁済によって消滅します。

しかし、法務局に記録されている抵当権の登記が自動的に削除されるわけではありません。

抵当権抹消登記を別途申請する必要があります。


例えば、昭和60年に住宅ローンを完済し、銀行から抵当権抹消関係書類を受け取っていたとしても、所有者が法務局へ抹消登記を申請していなければ、40年以上経過した現在でも登記簿上は抵当権が残る可能性があります。

法務局も、住宅ローン完済後に金融機関から抵当権抹消関係書類を受け取った場合には、紛失しないよう管理し、できるだけ速やかに抹消登記を行うことを案内しています。

古い抵当権が残っているからといって、

「現在も借金が残っている」

とは限りません。


逆に、

「借金を返したはずだから抵当権は存在しない」

と考えることもできません。

実体上の債務の状態と、登記簿上の抵当権の状態は分けて確認する必要があります。

相続した土地に古い抵当権が残っている場合は、まずその抵当権がなぜ残っているのかを調査するところから始めます。


2. 古い抵当権が残った不動産は売却できる?


2-1. 売買契約は可能でも、原則として引渡しまでに抹消する


古い抵当権が残っている不動産だからといって、不動産会社へ査定を依頼したり、売却相談をしたりすることができないわけではありません。

買主との間で売買契約を締結すること自体も、抵当権が存在するという理由だけで当然に禁止されるわけではありません。

しかし、一般的な不動産売買では、売主が所有権以外の負担を除去した状態で買主へ引き渡す条件とすることが通常です。


つまり、

売買契約時点では抵当権が残っていても、決済・引渡しまでに抹消する

という進め方が考えられます。


現在も住宅ローンが残っている一般的な不動産売却でも同様です。

例えば、

住宅ローン残高 800万円
不動産売却代金 1,500万円

であれば、決済日に買主から受領する売却代金の一部を利用して金融機関へ800万円を返済し、同時に抵当権を抹消するという方法があります。


ところが、何十年も前の古い抵当権では、

「抵当権者に連絡がつかない」

「完済したことを証明する資料がない」

「抵当権者が死亡している」

などの理由で、通常の抹消手続きをすぐに行えないことがあります。

この場合には、売買契約の直前になってから調査を始めるのではなく、査定・販売準備の段階から抵当権の整理を始めることが重要です。


2-2. 抵当権を残したまま売ることの問題点


法律上、抵当権が付いた状態の不動産の所有権を移転すること自体が常に不可能というわけではありません。

しかし、一般の買主が抵当権付きのまま購入することは通常避けます。

最大の理由は、買主が所有権を取得した後でも、抵当権が有効に存在していれば抵当権が実行される可能性があるためです。


例えば、

土地価格 500万円
古い抵当権 債権額100万円

という土地を買主が500万円で購入したとしても、古い抵当権が有効なままであれば、買主にとって重大な負担となります。


また、買主が住宅ローンを利用する場合には、金融機関も登記簿上の先順位抵当権を確認します。

古い抵当権が抹消されないままでは、買主側の金融機関が新しい抵当権を希望する順位で設定できないため、融資実行が難しくなる可能性があります。


法務省の相続土地国庫帰属制度でも、実体上債務が完済して抵当権が行使されない状態であっても、抵当権の「登記」が残っている土地については、抵当権登記を抹消しなければ申請できないと案内しています。

それだけ登記上の抵当権は重要な意味を持ちます。

したがって、売却では、

「借金が残っているか」だけでなく、「抵当権登記を消せる状態か」

まで確認する必要があります。


3. まず何を調べる?古い抵当権の確認方法


3-1. 登記事項証明書で抵当権の内容を確認する


古い抵当権を発見したら、最初に登記事項証明書の内容を確認します。

チェックしたいのは、主に次の事項です。

・抵当権設定の日付
・受付年月日・受付番号
・債権額
・利息
・損害金
・債務者
・抵当権者
・共同担保となっている他の不動産
・抵当権の順位番号


古い抵当権では、登記された住所や氏名が現在と一致しないこともあります。

また、土地と建物の両方に同じ抵当権が設定されている場合や、複数の土地が共同担保となっていることもあります。


一つの土地だけを見て、

「この土地の抵当権だけ消せば終わり」

と判断しないことが重要です。

共同担保目録がある場合には、同じ抵当権がどの不動産に設定されているのか確認します。


相続した不動産の場合は、所有者の相続登記も確認します。

所有者が祖父名義のままであり、

所有者 祖父
抵当権者 知らない個人

という状態であれば、

所有権側の相続登記

と、

抵当権側の抹消手続

の両方を整理する必要があります。


抵当権の抹消は権利に関する登記であるため、専門家へ依頼する場合の相談先は司法書士です。


3-2. 完済資料・契約書・抵当権者の現在の状況を調べる


次に、家の中や相続関係書類から、古い借入れに関する資料を探します。

例えば、

・金銭消費貸借契約書
・抵当権設定契約書
・借用証書
・返済に関する領収書
・弁済証書
・解除証書
・抵当権抹消用の委任状
・銀行から届いた完済書類

などです。


相続した実家を片付ける際に、

「何十年前の書類だから必要ない」

と処分してしまわないよう注意してください。

古い契約書や領収書が、抵当権抹消の重要な資料になる場合があります。


抵当権者が金融機関の場合は、現在どの金融機関が権利を承継しているか確認します。

銀行の合併、商号変更、事業承継などにより、登記簿に記載された銀行名が現在存在しなくても、後継の金融機関が存在することがあります。

この場合は、後継金融機関へ問い合わせることで通常の抵当権抹消に進める可能性があります。


抵当権者が個人の場合には、

・存命か
・現在の住所が分かるか
・死亡している場合は相続人が誰か

を調査する必要があります。

古い抵当権では、この「抵当権者側の調査」に時間がかかることがあります。


4. 抵当権者が現在も存在する場合の抹消方法


4-1. 完済済みなら抵当権者と共同で抹消登記をする


被担保債権が完済され、抵当権者である銀行や個人も現在確認できるのであれば、通常の抵当権抹消登記を行います。

抵当権抹消登記は、原則として、

登記権利者
=不動産所有者

登記義務者
=抵当権者

の共同申請となります。


住宅ローン完済後の一般的なケースでは、金融機関等から、

・登記原因証明情報
・委任状
・登記識別情報または登記済証

などの書類を受け取り、抵当権抹消登記を申請します。

登記原因証明情報は、「弁済証書」「解除証書」などの名称になっている場合があります。


抵当権抹消登記の登録免許税は、原則として土地または建物1個につき1,000円です。

例えば、

土地1筆
建物1棟

について同じ抵当権を抹消する場合は、原則2,000円です。


ただし、司法書士へ依頼する場合は、登録免許税とは別に司法書士報酬等が必要になります。

古い抵当権の場合は、通常の住宅ローン抹消とは異なり、

「抵当権者の現在の法人名を調査する」

「抵当権者の住所の変遷を確認する」

といった作業が必要になる場合があるため、費用や期間は案件ごとに異なります。


4-2. 書類を紛失している場合もまず抵当権者へ確認する


よくあるのが、

「40年前に完済したはずだが、銀行からもらった書類が見当たらない」

というケースです。

この場合も、

「書類がないから古い抵当権を消せない」

とすぐに判断する必要はありません。

まず抵当権者またはその承継会社へ問い合わせます。

金融機関側で完済記録等を確認できれば、抹消に必要な書類を改めて用意できる場合があります。


一方、古い登記済証や登記識別情報については単純な「再発行」ができないため、通常とは異なる登記手続が必要になるケースがあります。

登記識別情報等を提供できない場合の手続も不動産登記制度上用意されているため、司法書士や法務局へ確認します。

また、抵当権者である金融機関が合併している場合でも、抵当権が消滅した時期や合併時期によって必要な登記・添付書類が変わる可能性があります。


そのため、古い抵当権では、

「昔の銀行がもうないから抹消できない」

と自己判断せず、現在の承継関係を調査することが重要です。


5. 抵当権者が死亡・所在不明の場合はどうする?


5-1. 抵当権者が死亡している場合は相続関係を調査する


古い抵当権で難しくなりやすいのが、抵当権者が個人の場合です。

例えば、昭和30年代に、

祖父が知人から10万円を借りる

土地に知人名義の抵当権を設定

借金は返済したと思われる

祖父も抵当権者も死亡

というケースです。


抵当権者が死亡していても、登記が自動的に抹消されるわけではありません。

まず、

・抵当権者が死亡していること
・その相続人が誰か
・被担保債権がいつ、どのように消滅したのか

を確認します。

抵当権者の相続人が判明し、協力を得られる場合には、その相続関係を踏まえて抵当権抹消登記を進められる可能性があります。


ただし、

債権が消滅したのが抵当権者の死亡前か死亡後か

などによって必要な登記手続・添付書類が変わる場合があります。

また、抵当権者の死亡からさらに何十年も経っていると、

抵当権者死亡

その子も死亡

孫へ相続

という数次相続が発生していることもあります。


相続人が多数に増えている場合には、調査だけでも時間がかかる可能性があります。

このような案件は、早めに司法書士へ相談した方がよいでしょう。


5-2. 所在不明なら公示催告・供託などの制度を検討する


抵当権者や共同して抹消申請をするべき人の所在が分からない場合には、不動産登記法に特別な手続があります。

代表的な方法の一つが「公示催告」です。

登記義務者の所在が分からず共同申請できない場合、一定の調査を行ったうえで裁判所へ公示催告を申し立て、除権決定を得ることができれば、その決定を利用して所有者が単独で抹消登記を申請できる場合があります。


2023年4月1日施行の不動産登記法改正では、「所在が判明しない」ことを確認するための調査方法が明確化されています。

また、休眠抵当権については、後ほど説明する供託を利用した単独抹消制度もあります。


一方、

「抵当権者の住所は分かっているが、抹消に協力してくれない」

という場合は、単純に「所在不明」として供託制度を利用できるわけではありません。

協力が得られず紛争となった場合には、抵当権抹消登記手続を求める訴訟などを検討することがあります。

このような場合は弁護士と司法書士を適切に使い分ける必要があります。


6. 休眠抵当権を供託で抹消する方法


6-1. 弁済期から20年以上経過している場合の特例


何十年も前の抵当権で抵当権者の所在が分からない場合、「休眠担保権抹消のための供託」という制度を利用できる場合があります。


法務省が案内している主な要件は、次のとおりです。

1.抵当権者など登記義務者が所在不明であること

抵当権者と共同して抵当権抹消登記を申請できない状態である必要があります。

2.被担保債権の弁済期から20年以上経過していること

注意したいのは、

「抵当権設定から20年」

ではなく、

被担保債権の弁済期から20年以上

という点です。

3.元本・利息・遅延損害金を供託すること

被担保債権の元本だけではありません。

原則として利息や債務不履行によって生じた損害金を含めた金額を供託する必要があります。

4.供託を証明する書面を付けて単独で抹消登記を申請すること

要件を満たして供託を行った後、供託書正本等を利用して不動産所有者が単独で抵当権抹消登記を申請できる制度です。

例えば、

債権額 100円
弁済期 昭和30年
抵当権者 所在不明

といった非常に古い抵当権であれば、供託額も比較的小さくなる可能性があります。

しかし、債権額が大きく、利息や損害金の約定がある場合には、供託額が高額になる可能性もあります。

古い抵当権だから供託制度が必ず最も簡単とは限りません。


6-2. 「20年経てば自動的に抹消できる」わけではない


休眠抵当権について特に注意したい誤解があります。

それが、

「抵当権は20年経てば消せる」

という説明です。

これは正確ではありません。

供託による特例で重要なのは、

「弁済期から20年以上経過している」

という条件だけではありません。

抵当権者が所在不明で共同申請できないことや、被担保債権の元本、利息、損害金を供託することなど、ほかの要件も必要です。

また、民法396条では、抵当権について、債務者や抵当権設定者との関係では担保する債権と同時でなければ時効によって消滅しない旨が定められています。

したがって、

「設定から20年経った」

「登記が昭和時代のものだ」

という事実だけで、自動的に抵当権登記を削除できるわけではありません。


まず、

・弁済期はいつか
・債権は完済されているのか
・抵当権者は本当に所在不明か
・供託制度を使うべきか
・別の方法で抹消できないか

を確認します。


休眠抵当権の供託では、古い利息・遅延損害金の計算も問題になるため、司法書士や供託を扱う法務局へ事前に相談することが重要です。


7. 抵当権者が解散法人の場合の新しい抹消制度


7-1. 2023年4月から単独抹消制度が新設


古い抵当権では、抵当権者が会社になっていることがあります。

例えば、

昭和40年
株式会社○○商事から借入れ

土地に抵当権設定

現在、○○商事は解散

というケースです。

従来、このような抵当権では、法人が清算結了していたり清算人の所在が分からなかったりすると、抹消手続が非常に複雑になる場合がありました。


そこで2023年4月1日から、不動産登記法第70条の2による新しい仕組みが設けられました。

一定の条件を満たす解散法人名義の、

・先取特権
・質権
・抵当権

について、不動産所有者などの登記権利者が単独で抹消登記を申請できる制度です。


この制度では供託を必要としないため、条件に該当する古い法人名義の抵当権では有効な選択肢となる可能性があります。

ただし、

「会社が存在しない」

というだけで利用できる制度ではありません。

法人の登記や清算人の状況を調査する必要があります。


7-2. 弁済期30年・法人解散30年などの要件を確認する


不動産登記法第70条の2の制度を利用するためには、主に次の条件が問題になります。

1.抵当権者である法人が解散していること

単に営業していない、連絡がつかないというだけではなく、法人の解散を確認します。

2.定められた方法で調査しても清算人の所在が判明しないこと

法人の登記事項証明書や清算人の住民票等の調査、郵便による所在調査など、法令で定められた方法に従って調査する必要があります。

3.被担保債権の弁済期から30年が経過していること

4.法人が解散した日から30年が経過していること


この、

「弁済期から30年」+「法人解散から30年」

の両方が重要です。

例えば、

弁済期 昭和55年
法人解散 平成5年

であれば、2026年時点ではどちらについても30年以上経過しています。


一方、

抵当権設定 昭和50年
法人解散 平成20年

であれば、法人解散からまだ30年経っていないため、この特例の対象にならない可能性があります。


また、弁済期を証明する資料、法人の解散日を証明する登記事項証明書、清算人を調査した結果を示す資料などが必要です。

したがって、

「古い会社名だから70条の2で消せる」

と判断するのではなく、司法書士へ登記記録と法人登記を確認してもらうことが重要です。


8. まとめ|古い抵当権は売却活動の前段階から整理する


8-1. 古い抵当権付き不動産を売却する具体的な流れ


相続した実家や土地に古い抵当権が見つかった場合は、次のような順番で進めると整理しやすくなります。

1.登記事項証明書を取得する

抵当権者、債権額、設定日、債務者などを確認します。

2.相続登記の状態も確認する

所有者が亡くなった人の名義なら、所有権側の相続登記も整理します。

3.古い契約書・完済書類を探す

借用証書、領収書、解除証書、銀行からの書類などを確認します。

4.抵当権者の現在の状態を調べる

現在も存在する金融機関なのか、合併しているのか、個人なら存命なのか、法人なら解散しているのかを確認します。

5.不動産会社へ査定・売却相談をする

抵当権抹消が終わる前でも、査定や売却準備を始めることはできます。

ただし、販売開始や売買契約の時期は、抵当権抹消の見通しを踏まえて判断します。

6.司法書士へ抹消方法を相談する

状況によって、

・通常の共同申請
・抵当権者の相続人との手続
・公示催告
・供託による休眠担保権抹消
・解散法人に関する70条の2の手続

などを検討します。

7.必要に応じて弁護士へ相談する

抵当権者や相続人と争いがある、抹消への協力を拒否されている、債権の有無自体に争いがあるなどの場合です。

8.抵当権抹消の見通しを付けて販売する

購入希望者へ権利関係を正確に説明します。

9.売買契約

契約時点で抵当権が残っている場合には、

「売主の責任と負担において所有権移転時までに抵当権を抹消する」

など、引渡し条件を明確にします。

10.決済・抵当権抹消・所有権移転

売却代金を受領し、抵当権抹消と買主への所有権移転を安全に行える状態を確認して決済します。


ここで重要なのは、

抵当権が残っているから不動産会社に相談できないわけではない

ということです。

むしろ、

「この抵当権は簡単に消せるのか」

「半年かかるのか」

「裁判や供託まで必要なのか」

によって、販売時期や売買契約の組み立て方が変わります。

売却を決めた段階で早めに調査を始めた方がよいでしょう。


8-2. 不動産会社・司法書士・弁護士の役割を使い分ける


古い抵当権付き不動産の売却では、専門家の役割を正しく分けることが重要です。


不動産会社

・不動産査定
・販売価格の検討
・媒介契約
・販売活動
・買主との条件調整
・抵当権抹消を前提とした売買スケジュールの整理

を担当します。


司法書士

・抵当権抹消登記
・相続登記
・売買による所有権移転登記
・古い抵当権者や法人の登記関係の調査
・休眠担保権の抹消手続の検討

など、権利に関する登記を扱います。

古い抵当権が見つかった場合、中心となる登記専門家は司法書士です。


弁護士

・抵当権者との紛争
・相続人との交渉
・債権の存否についての争い
・抵当権抹消登記手続を求める訴訟

などが必要な場合に相談します。


土地家屋調査士

抵当権そのものの抹消ではなく、売却物件について未登記建物、増築未登記、境界、測量、分筆などの問題がある場合に相談します。

相続不動産では、

古い抵当権
+相続登記未了
+未登記建物
+境界不明

というように、複数の問題が同時に存在することがあります。


そのため、

「抵当権だけ消せば売れる」

とは限りません。

まず不動産全体を調査し、売却までに必要な作業を整理することが重要です。


株式会社Wakkaが拠点を置く山梨県南部町や身延町など峡南地域、静岡県富士宮市周辺には、親や祖父母から長く所有されてきた土地・建物もあります。

築年数が古い住宅や代々相続されてきた土地では、現在の所有者が知らない抵当権が残っていることも考えられます。

しかし、

「昭和時代の抵当権があるから売れない」

と最初から判断する必要はありません。

反対に、

「何十年も前だから無視して売ってよい」

と考えることもできません。

大切なのは、

抵当権の内容を確認する

債権が残っているか確認する

抵当権者の現在の状態を調べる

利用できる抹消方法を決める

売却スケジュールを組む

という順番です。


抵当権者が現在も存在すれば通常の抹消手続で済む可能性があります。

抵当権者が死亡していれば相続人を確認します。

所在不明で、弁済期から20年以上経過しているなどの要件を満たせば、供託による休眠抵当権抹消を検討できることがあります。

抵当権者が解散法人であれば、2023年4月から始まった不動産登記法第70条の2の制度を利用できる可能性があります。


株式会社Wakkaでは、南部町との空き家対策に関する協定で培う地域課題への視点も踏まえ、古い抵当権、相続登記、未登記建物、境界、残置物など、売却を妨げる問題を整理したうえで、不動産流通へつなげることを重視しています。

「登記簿を取ったら知らない抵当権が出てきた」

「何十年も前の抵当権なので、誰に連絡したらよいか分からない」

「相続した土地を売りたいが抵当権者が亡くなっている」

という段階でも、不動産売却の相談を始めることはできます。


古い抵当権ほど、売買契約直前になって慌てて調査するのではなく、売却を検討し始めた段階で登記事項証明書を確認し、早めに整理を始めることが重要です。


株式会社Wakka
住所:〒409-2217
山梨県南巨摩郡南部町本郷6507

電話番号:0556-64-8064



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