相続した土地・建物の名義が昔のままでも売れる?所有者が分からない不動産の調べ方と解決方法

相続した土地・建物の名義が昔のままでも売れる?所有者が分からない不動産の調べ方と解決方法

相続した土地・建物の名義が昔のままでも売れる?所有者が分からない不動産の調べ方と解決方法

相続した実家や土地を売ろうとして登記事項証明書を確認したところ、「名義が亡くなった祖父のまま」「住所が何十年も前のまま」「建物だけ登記が見つからない」と分かることがあります。

固定資産税の納税通知書が自分に届いているため、「自分が所有者なのだからそのまま売れるだろう」と考える方もいます。しかし、固定資産税の課税上の名義と、法務局の不動産登記上の所有者は同じ制度ではありません。

結論からいうと、**登記名義が昔のままでも、現在の所有者・相続人を確認して必要な登記を整えれば、売却できる可能性があります。**一方、登記上の所有者が亡くなっている場合に、その名義から買主へ直接「売買」で所有権移転登記をすることはできません。原則として、先に相続による所有権移転登記を行い、その後に相続人から買主へ売買による所有権移転登記を行います。東京法務局も、被相続人から第三者へ直接移転するのではなく、「被相続人→相続人→買主」の順に登記する必要があると案内しています。

また、「所有者が分からない」といっても状況は一つではありません。亡くなった人の名義が残っている、相続人が多数いる、相続人の一人と連絡が取れない、所有者の住所が古い、建物が未登記、相続人がいないなど、原因によって解決方法が異なります。

2026年には不動産登記制度にも重要な変更がありました。2026年2月2日から「所有不動産記録証明制度」が始まり、本人や相続人が、登記名義人となっている不動産を全国的に把握しやすくなっています。また、2026年4月1日からは、所有者の住所・氏名等の変更登記も義務化されています。

この記事では、相続した土地・建物の名義が古いままの場合に売却できるのか、所有者をどのように調べるのか、相続人が分からない・連絡が取れない場合はどうするのか、未登記建物や古い抵当権がある場合はどう整理するのかまで、現在の制度と不動産実務に沿って解説します。

株式会社Wakka

株式会社Wakkaは山梨県南部町を拠点に、空き家、相続不動産、中古住宅、土地、農地付き住宅などの売却相談に対応しています。南部町とは空き家対策に関する協定を結んでおり、相続登記未了、未登記建物、古い抵当権、境界、農地、残置物など、売却前に整理が必要な不動産についても、現在の状態を確認して必要な手続きを切り分け、必要に応じて司法書士・土地家屋調査士・税理士・弁護士等と連携しながら売却までの道筋を考えることを重視しています。

株式会社Wakka
住所:
〒409-2217
山梨県南巨摩郡南部町本郷6507
電話番号:
0556-64-8064


目次

  1. 名義が昔のままの不動産は売れる?
    1. 売買契約と所有権移転登記は分けて考える
    2. 「名義が古い」と「所有者不明」は同じではない
  2. まず何を見れば所有者を調べられる?
    1. 登記事項証明書・地番・家屋番号を確認する
    2. 固定資産税資料と現地を照合する
  3. 亡くなった人の名義なら相続人を調べる
    1. 戸籍等で法定相続人を確認する
    2. 所有不動産記録証明制度で登記漏れを防ぐ
  4. 住所・氏名が昔のまま、建物が未登記の場合
    1. 2026年から住所等変更登記も義務化
    2. 未登記建物・表題部だけの建物は別に整理する
  5. 相続人が多い・連絡が取れない場合の解決方法
    1. 数次相続・共有状態を整理する
    2. 行方不明の相続人がいる場合
  6. 相続人がいない・本当に所有者が分からない場合
    1. 相続財産清算人が必要になるケース
    2. 所有者不明土地・建物管理制度などの例外的手続
  7. 名義が古い不動産を売却するまでの実務的な流れ
    1. 状態別に必要な手続きを分ける
    2. 専門家の役割を正しく使い分ける
  8. 古い名義の空き家を放置しないために
    1. 「全部直してから売る」必要はない
    2. 南部町・身延町・富士宮市周辺での進め方

1. 名義が昔のままの不動産は売れる?

相続不動産でよくあるのが、実際に管理している人と登記名義人が一致していないケースです。

例えば、固定資産税は長男が支払っているものの登記は父名義、土地は父名義だが建物は祖父名義、母屋は登記済みだが納屋は登記されていない、といった状態です。

まず、「現在の名義のまま売買契約書を作れるか」だけで考えないことが重要です。


売買契約と所有権移転登記は分けて考える

亡くなった人名義の不動産について、相続人全員が売却に合意し、誰が取得するかが確定しているなどの条件が整っていれば、相続登記の準備と売却査定・販売準備を並行して進めることはできます。

しかし、最終的に買主へ所有権移転登記をするためには、売主側の権利関係を整える必要があります。

登記名義人である父が亡くなった後、相続人が父名義のまま第三者へ売却したとしても、法務局では原則として、


↓ 相続
相続人
↓ 売買
買主

という順序で登記します。

父から買主へ直接「売買」による所有権移転登記をすることはできません。

そのため、「相続登記をしない方が登記費用を1回分節約できる」という考え方は適切ではありません。

ただし、相続が何代も続いている場合には、中間の相続登記を省略できる特殊なケースもあります。例えば、最初の相続が単独相続である場合など、一定の条件では最終相続人まで直接相続登記できることがあります。数次相続では一律に判断せず、司法書士へ確認しましょう。東京法務局も、最初の相続が単独相続となる一定のケースでは、最終の相続人まで直接相続登記できる場合があると案内しています。


「名義が古い」と「所有者不明」は同じではない

「登記名義が祖父のまま」というだけで、法律上直ちに「所有者不明土地」になるわけではありません。

祖父が亡くなっており、その戸籍をたどれば相続人を特定できるのであれば、権利関係を調査して相続登記へ進められる可能性があります。

一方、

  • 登記名義人の住所が非常に古い
  • 登記名義人が死亡したかどうか分からない
  • 相続人の所在が分からない
  • 共有者の一人だけ連絡先が分からない
  • 所有者自体を調査しても特定できない

といった場合は、通常の相続登記だけでは解決できないことがあります。

ここで大切なのは、「所有者が分からないから売れない」と結論を出す前に、

誰が登記名義人なのか

その人は生存しているのか

亡くなっているなら相続人は誰か

相続人と連絡が取れるか

誰が現在の所有権を取得するのか

という順番で確認することです。


2. まず何を見れば所有者を調べられる?

所有者を調べる第一歩は、法務局の登記記録です。

登記事項証明書・地番・家屋番号を確認する

不動産の登記記録は、土地は一筆ごと、建物は一個ごとに作成され、主に「表題部」と「権利部」に分かれています。

土地の表題部には所在、地番、地目、地積など、建物には所在、家屋番号、種類、構造、床面積などが記録されています。

権利部の甲区には所有権に関する事項、乙区には抵当権など所有権以外の権利が記録されます。

まず甲区を確認し、

  • 現在の登記名義人
  • 共有持分
  • 所有権を取得した原因と日付
  • 登記された住所

を見ます。

乙区では、

  • 抵当権
  • 根抵当権
  • 地上権など

が残っていないか確認します。

土地・建物の登記事項証明書は、自分が所有者でない不動産についても請求できます。ただし、土地では地番、建物では家屋番号を特定する必要があります。

住所と地番は同じとは限りません。

地番が分からない場合は、権利証・登記識別情報、固定資産税課税明細書、公図、過去の契約書などから特定していきます。

現在は登記事項証明書、地図証明書、地積測量図等についてオンラインでの交付請求も利用できます。


固定資産税資料と現地を照合する

登記事項証明書だけで終わらず、固定資産税の資料と現地も照合します。

相続した実家では、

  • 課税明細には母屋と納屋がある
  • 法務局では母屋しか登記されていない
  • 現地にはさらに車庫がある

ということがあります。

この場合、車庫や納屋が未登記なのか、別の建物と一体として登記されているのか、増築扱いなのかを確認します。

一方、

  • 登記には倉庫がある
  • 現地にはすでに建物がない

ということもあります。

その場合は建物滅失登記が未了である可能性があります。

固定資産税課税明細、名寄帳、固定資産評価証明書等は、不動産の把握に役立つ資料ですが、課税資料に名前が載っていることだけで民事上の所有権が最終的に確定するわけではありません。

登記
+ 固定資産税資料
+ 現地

の3つを照合することが基本です。

田舎の不動産では、宅地だけでなく畑、田、山林、原野などが複数筆に分かれていることもあります。

実家の敷地だけ確認して「これで全部」と決めず、被相続人が他にも土地を所有していなかったか確認することが重要です。


3. 亡くなった人の名義なら相続人を調べる

登記名義人が亡くなっている場合は、現在の相続人を確定します。

戸籍等で法定相続人を確認する

一般的な相続では、被相続人の出生から死亡までの戸籍・除籍・改製原戸籍などをたどり、法定相続人を確認します。

例えば登記名義が祖父であっても、

祖父死亡

父が相続

父死亡

現在の子どもたちが相続

というように二段階以上の相続が発生している場合があります。

このような状態は一般に「数次相続」と呼ばれます。

数次相続で重要なのは、現在生きている親族だけを見て相続人を決めないことです。

各相続発生時点で、

  • 配偶者
  • 代襲相続人
  • 兄弟姉妹等

の関係を順番に確認します。

遺言書がある場合は、遺言の内容によって取得者が変わる可能性があります。

遺産分割協議済みであれば、その協議内容も確認します。

相続関係が複雑な場合は、司法書士へ戸籍収集から相談することで、売却に必要な登記までの道筋を整理しやすくなります。


所有不動産記録証明制度で登記漏れを防ぐ

2026年2月2日から「所有不動産記録証明制度」が始まりました。

これは、登記官が、特定の人が所有権の登記名義人として記録されている不動産を一覧化して証明する制度です。

請求できるのは、登記簿上の所有者本人や、その相続人その他の一般承継人等です。全国の法務局等で書面またはオンラインによる請求が可能です。

例えば父が亡くなり、

「実家以外にも山林や畑を持っていたはずだが、どこか分からない」

という場合、相続人が父名義の不動産を把握するための有力な方法になりました。

従来は土地・建物ごとに調査する必要があり、「知らなかった土地」の登記漏れが生じる原因になっていました。

ただし、この制度にも注意点があります。

所有不動産記録証明書は、指定した氏名・住所等の検索条件をもとに登記記録を検索します。そのため、古い登記上の氏名・住所と検索条件が一致しない場合は抽出されないことがあります。過去の住所や氏名も検索条件に含める必要がある場合があります。

また、そもそも所有権の登記名義人として記録されていない未登記建物などを、この制度だけで把握できるわけではありません。

したがって、

所有不動産記録証明書を取ったから全財産が100%判明した

と考えず、固定資産税資料や過去の権利証、現地状況も併せて確認しましょう。


4. 住所・氏名が昔のまま、建物が未登記の場合

「所有者の名前は合っているが住所が旧住所」「結婚前の姓のまま」といった場合と、「建物そのものが登記されていない」場合では、手続きが違います。

2026年から住所等変更登記も義務化

2026年4月1日から、不動産の所有権登記名義人について、住所や氏名・名称に変更があった場合の変更登記が義務化されました。

原則として、住所や氏名等の変更日から2年以内に変更登記をする必要があります。

正当な理由なく義務に違反した場合は、5万円以下の過料の対象となる可能性があります。

また、2026年4月1日より前に住所・氏名等を変更していたものの変更登記をしていない場合も義務化の対象で、原則として2028年3月31日までに変更登記を行う必要があります。

売却する場合も、登記上の住所と現在住所が違うと、通常は所有権移転登記の前提として住所変更登記が必要になります。

現在は「スマート変更登記」という仕組みも始まっています。

検索用情報を申し出ておけば、住所・氏名等の変更を法務局側で確認し、一定の条件のもと職権で変更登記を行う仕組みです。

ただし、今すぐ売却する不動産で登記上の住所が古い場合には、決済スケジュールもあるため、司法書士へ早めに確認するとよいでしょう。


未登記建物・表題部だけの建物は別に整理する

土地は登記済みでも、古い母屋、納屋、倉庫、車庫などが未登記であることがあります。

建物の表題登記自体がない場合には、誰の所有物なのかを確認したうえで、建物表題登記を検討します。

表示に関する登記を専門家へ依頼する場合は土地家屋調査士が担当します。所有権移転など権利に関する登記は司法書士の専門分野です。

一方、建物の表題登記はあるものの、権利部に所有権保存登記がない場合があります。

この場合は「未登記」というより、「表題部のみで所有権の登記がない状態」です。

被相続人が表題部所有者であれば、その相続人が所有権保存登記を行うケースがあります。東京法務局も、表題部だけで所有権登記がない不動産を相続した場合は、所有権保存登記を申請する扱いを案内しています。

また、登記上は平家なのに現況は2階建て、床面積が増えているなど、登記と現況が違う場合には変更登記が必要になる可能性があります。

売却実務では、

  • 完全未登記
  • 表題登記のみ
  • 所有権登記済み
  • 増築変更未了
  • 解体済みだが滅失登記未了

を区別する必要があります。


5. 相続人が多い・連絡が取れない場合の解決方法

相続人が全員分かっていて全員と連絡が取れるなら、遺産分割協議や必要な相続登記を進められます。

問題になりやすいのは、相続人が多数いる場合や、一部の相続人と連絡が取れない場合です。

数次相続・共有状態を整理する

相続登記を長年放置すると、次の相続が発生して関係者が増える可能性があります。

例えば祖父名義の土地について、父の世代では兄弟3人だったとしても、その兄弟がそれぞれ亡くなれば、子や配偶者へ権利関係が広がることがあります。

この場合、「実家を管理してきた自分だけで売却する」ことはできません。

共有状態の不動産全体を第三者へ売却する場合、原則として共有者全員の合意が必要です。

最初に、

  • 誰が共有者なのか
  • 持分はどのくらいか
  • 遺産分割が必要か
  • 過去の遺産分割協議書があるか
  • 相続放棄した人がいるか

を確認します。

また、相続人申告登記をしただけでは、売却のための権利関係は整いません。

相続人申告登記は、相続登記義務を簡易に履行するための制度であり、不動産の権利関係そのものを公示する登記ではありません。相続不動産を売却したり抵当権を設定したりする場合には、別途通常の相続登記が必要です。


行方不明の相続人がいる場合

相続人の一人について、戸籍上は存在するものの住所を離れ、容易に戻る見込みがなく連絡が取れない場合があります。

このような場合には、家庭裁判所へ「不在者財産管理人」の選任を申し立てる方法があります。

不在者財産管理人は、不在者の財産を管理・保存します。

ただし、不在者に代わって遺産分割協議をしたり、不動産を売却したりすることは通常の管理権限を超えるため、家庭裁判所の「権限外行為許可」が必要です。

つまり、

「相続人の一人と連絡がつかないので、その人抜きで売ってしまう」

ことはできません。

まず本当に不在者に該当するのか、住民票・戸籍附票等による所在調査を行い、それでも所在が分からない場合に裁判所手続きを検討します。

単に「電話に出ない」「家族と仲が悪く連絡していない」というだけで、直ちに不在者財産管理人を利用できるわけではありません。

相続人間で争いがある場合は、所在不明の問題とは別に、弁護士への相談が必要になることがあります。


6. 相続人がいない・本当に所有者が分からない場合

相続人の所在が分からないケースと、そもそも相続する人がいないケースも区別する必要があります。

相続財産清算人が必要になるケース

被相続人に戸籍上の相続人がいない場合や、相続人全員が相続放棄をして結果的に相続する人がいなくなった場合など、相続人の存在が明らかでないときには、「相続財産清算人」という制度があります。

家庭裁判所が利害関係人等からの申立てにより相続財産清算人を選任し、清算人が被相続人の債務を支払うなど相続財産を清算します。

必要があれば、相続財産清算人は家庭裁判所の許可を得て不動産を売却し、金銭化することもあります。

この制度は、

「所有者が亡くなっているようだが、親族がいない」
「相続人全員が相続放棄した物件を購入したい」
「亡くなった所有者に対する債権があり不動産を清算する必要がある」

といった場合に関係します。

一般的な相続人が存在するのに、単に連絡が取れない場合は相続財産清算人ではなく、不在者財産管理人など別の制度を検討します。


所有者不明土地・建物管理制度などの例外的手続

戸籍・住民票・登記等を調査しても所有者を特定できない、または所有者の所在を知ることができない土地・建物については、「所有者不明土地・建物管理制度」が利用できる場合があります。

これは利害関係人が地方裁判所へ申し立て、特定の所有者不明土地・建物について管理人による管理を求める制度です。不動産の利用・買取りを希望しているものの、所有者を特定できない場合なども制度の対象となり得ます。

ただし、一般的な相続登記の代替として気軽に利用する制度ではありません。

所有者や所在について必要な調査をしたことを示す資料などが必要で、管理人の報酬・管理費用等のため予納金を求められることもあります。

また、共有不動産で「共有者の一人だけ所在が分からない」場合には、所在等不明共有者の持分取得や持分譲渡権限付与など、別の裁判手続が利用できるケースもあります。

相続財産に属する所在等不明共有持分については、共同相続人間で遺産分割すべき財産の場合、原則として相続開始から10年を経過していないと持分取得の裁判ができないなど、特別な要件があります。

こうした裁判所手続が必要な段階では、不動産会社だけで解決方法を判断せず、弁護士や司法書士等へ相談しながら進めます。


7. 名義が古い不動産を売却するまでの実務的な流れ

名義が古い不動産では、最初からすべての戸籍や登記を取得しようとすると混乱しやすいため、「現在の状態」を先に分類すると整理しやすくなります。

状態別に必要な手続きを分ける

現在の状態主な対応
登記名義人が生存・住所だけ古い住所等変更登記を確認
登記名義人が死亡相続人調査・相続登記
祖父母名義のまま数代相続数次相続を整理
相続人の一人が所在不明不在者財産管理人等を検討
相続人がいない・全員放棄相続財産清算人を検討
建物の登記自体がない建物表題登記等を検討
表題部だけで所有権登記なし所有権保存登記を検討
解体済み建物の登記が残る建物滅失登記を確認
古い抵当権が残る抵当権抹消手続きを確認
所有者・所在を調査しても不明所有者不明土地・建物管理制度等を検討

売却を考えている場合は、次の順序が実務的です。

ステップ1 不動産を特定する

登記事項証明書、固定資産税課税明細、名寄帳、公図等を確認します。

ステップ2 現地と登記を照合する

母屋、納屋、倉庫、車庫、農地、山林等を確認します。

ステップ3 登記名義人を確認する

生存・死亡、住所変更、共有持分を確認します。

ステップ4 相続人を確定する

戸籍、遺言、過去の遺産分割協議書等を確認します。

ステップ5 必要な登記・裁判所手続を整理する

相続登記、住所変更、表題登記、保存登記、滅失登記、抵当権抹消等を分類します。

ステップ6 売却査定を並行する

登記がすべて終わるまで不動産会社へ相談できないわけではありません。相続人・売却権限の見通しが確認できれば、査定、現地調査、販売方法の検討を並行できる場合があります。

ステップ7 契約・決済に必要な状態を明確にする

誰が売主となるのか、どの登記を決済までに終えるのか、未登記建物・残置物・境界をどう扱うのかを契約条件へ反映します。


古い抵当権・仮登記が残っている場合も「所有者調査」と一緒に確認する

所有者が分かった後に、次の問題として古い抵当権や仮登記が見つかることがあります。

例えば、昭和50年代に金融機関から借入れをした際の抵当権が登記されたままになっているものの、家族は「ローンは昔に返し終わったはず」と認識しているケースです。

借入金を完済していても、抵当権抹消登記をしていなければ登記記録上の抵当権は自動的には消えません。

売却時には通常、買主へ抵当権等の負担がない状態で所有権を移転する条件とすることが多いため、金融機関やその承継先を確認し、司法書士へ抹消方法を相談します。

古い金融機関が合併・解散している、必要書類が残っていないといった場合は、通常より時間がかかることがあります。そのため、所有者調査と同じタイミングで乙区まで確認しておくことが重要です。

また、「所有権移転請求権仮登記」などの仮登記が残っている場合も、単に古いから無視できるとは限りません。

仮登記の原因、権利者、現在の権利関係を確認し、抹消や本登記の必要性を司法書士等へ相談します。

田舎の古い不動産では、

古い名義
+ 古い住所
+ 古い抵当権
+ 未登記建物

が同時に見つかることがあります。

一つずつ別問題として整理し、「どの手続きが売却前に必要か」を確認することが重要です。

専門家の役割を正しく使い分ける

名義が古い不動産ほど、一人の専門家だけでは完結しないことがあります。

不動産会社

査定、物件調査、販売方法の検討、媒介、買主募集、契約・決済の調整を行います。

司法書士

相続登記、所有権保存・移転、住所等変更登記、抵当権抹消など権利に関する登記を担当します。

土地家屋調査士

建物表題登記、建物の表示変更・滅失登記、土地分筆、地積更正、境界・測量等を担当します。法務局も、権利に関する登記は司法書士、表示に関する登記は土地家屋調査士が専門家であると案内しています。

弁護士

相続人間の争い、共有者との交渉、遺産分割紛争など法律紛争を担当します。

税理士

相続税や売却後の譲渡所得税など、税務判断・申告を担当します。

「所有者を調べたい」という相談でも、最初に何が分からないのかで相談先が変わります。

登記名義と戸籍のつながりが問題なら司法書士、境界や未登記建物なら土地家屋調査士、相続人同士が争っているなら弁護士、不動産をどの状態でいくらで売れるか知りたいなら不動産会社、というように切り分けましょう。


8. 古い名義の空き家を放置しないために

登記名義が古い不動産は、時間が経つほど自然に解決することはほとんどありません。

むしろ次の相続が発生すると、関係者や必要書類が増える可能性があります。

相続登記は2024年4月1日から義務化され、相続により不動産を取得したことを知った日などから原則3年以内の申請が必要です。正当な理由なく義務に違反すると10万円以下の過料対象となる可能性があります。義務化前の相続も対象で、施行前から取得を知っていた場合などは2027年3月31日が重要な期限です。

「全部直してから売る」必要はない

古い名義の物件を売却する場合、

「相続登記」
「未登記建物」
「境界」
「農地」
「残置物」
「修繕」

がすべて同時に問題になっていることがあります。

このとき、売主が全部に費用をかけて解決してから査定を依頼する必要はありません。

例えば、

売却に原則必要となるもの

  • 売主の権利関係の確定
  • 必要な相続登記
  • 買主へ所有権移転できる状態

物件によって必要性を判断するもの

  • 境界確定測量
  • 分筆
  • 農地転用
  • 未登記建物の整理
  • 古い抵当権の抹消

契約条件で調整できることがあるもの

  • 残置物
  • 建物修繕
  • 古い設備
  • 解体の負担

というように分けられます。

先に不動産会社へ現状を見せ、売却に必要な項目と、買主へ説明して引き継げる項目を分けることで、不要な費用をかけずに済む場合があります。


南部町・身延町・富士宮市周辺での進め方

山梨県南部町、身延町、早川町や静岡県富士宮市周辺では、相続した実家に農地、山林、未登記の納屋、古い抵当権、境界不明、井戸・浄化槽などが重なっていることがあります。

こうした物件では、「相続登記だけ終われば売れる」とも、「古い家だから売れない」とも限りません。

株式会社Wakkaでは、南部町との空き家対策に関する協定による地域連携も踏まえ、空き家・相続不動産について、

登記上は誰のものか
現地には何があるか
売却を止めている問題は何か
誰に確認すべき問題か
どこまで売主側で整理するか

を先に確認することを重視しています。

南部町の空き家や相続不動産だけでなく、身延町や富士宮市周辺の古家・農地付き住宅でも、基本は同じです。

最初におすすめするのは、

  1. 固定資産税課税明細を用意する
  2. 土地・建物の登記事項証明書を確認する
  3. 現地にある建物と登記を照合する
  4. 登記名義人が亡くなっているか確認する
  5. 相続人・遺言・過去の遺産分割を整理する
  6. その状態で不動産会社と司法書士等へ相談する

という順序です。

所有者調査で避けたい3つの思い込み

所有者が分からない不動産では、次のような思い込みから手続きが止まりやすくなります。

「固定資産税を払っている人が所有者」

固定資産税の納税義務者や納税管理人として名前が載っていても、それだけで所有権が確定するわけではありません。登記・相続関係を確認します。

「登記簿に書いてある人が現在も生きていて、その住所に住んでいる」

登記は過去の権利変動が反映されていない場合があります。特に相続登記や住所変更登記が長期間行われていない物件では、登記記録を出発点として戸籍・住所関係資料をたどる必要があります。

「昔の名義なので、その人を飛ばして現在の家族名義にすればよい」

相続の経過によっては中間の相続関係を証明する必要があります。一定の場合に中間登記を省略できることはありますが、どの数次相続でも自由に飛ばせるわけではありません。

調査を始めるときは、「誰が所有者だと思うか」ではなく、「どの資料でどこまで確認できているか」を整理しましょう。


よくある質問

Q. 祖父名義のままでも不動産会社へ売却相談できますか?

相談や査定はできます。ただし、買主への所有権移転登記までには、現在の相続人を確認し、必要な相続登記を行う必要があります。

Q. 固定資産税を自分が払っていれば所有者として売れますか?

固定資産税を支払っていることだけで、売却できる所有者であると確定するわけではありません。登記と相続関係を確認します。

Q. 所有不動産記録証明書を取れば、親の不動産は全部分かりますか?

非常に有用な制度ですが、検索条件と登記上の氏名・住所が一致しないと抽出されないことがあります。また、登記されていない建物まで把握できるとは限りません。固定資産税資料等と併用しましょう。

Q. 相続人の一人と連絡が取れなくても売れますか?

その相続人の権利を無視して売却することはできません。所在調査を行い、本当に不在者に該当する場合は不在者財産管理人など家庭裁判所の手続を検討します。不在者の不動産を管理人が売却する場合には、家庭裁判所の権限外行為許可が必要です。

Q. 相続人全員が相続放棄している場合は誰が売りますか?

相続人がいない状態では、家庭裁判所が相続財産清算人を選任し、その清算手続の中で不動産売却が行われる場合があります。

Q. 相続人申告登記をすれば売却できますか?

相続人申告登記は相続登記義務を簡易に履行する制度で、売却のための権利関係を公示するものではありません。売却する場合は別途相続登記が必要です。

相続した土地・建物の名義が昔のままでも、問題の種類を一つずつ分ければ解決への道筋を作れる場合があります。

最も避けたいのは、

「誰のものか分からないので放置する」

ことです。

まず登記を確認し、次に相続人を確認し、それでも分からない部分だけを専門家や裁判所の制度で補っていきます。

名義が古い不動産は、価格査定より前に「誰が売れるのか」を整理することが重要ですが、登記完了まで売却準備を何もできないわけではありません。

なお、売却を急いでいる場合でも、最初に「相続人が何人いるか」「未登記建物があるか」「古い抵当権が残っているか」を確認しておくと、契約後の手戻りを減らしやすくなります。査定価格だけ先に決めるのではなく、決済までに必要な手続きと概算費用を同時に確認しておくことが、古い名義の不動産では特に重要です。

相続・登記の整理と、不動産としての査定・調査を並行して進めることで、売却までの時間と費用を見通しやすくなります。


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